パリつぶ

パリジェンヌたちのつぶやき

オペラ・ガルニエのロンシャン70周年ソワレ

 

f:id:bonjour-paris:20180731112110j:plain エマ  アラサー独身、雑誌編集部の事務職。

 

 職場のランチタイムが終わって席に戻ると、同僚の編集者ヴァレリーが近づいて来て、

「エマ、明日の夜は空いてる?よかったら、ロンシャン70周年ソワレに私の代わりに行かない?編集長と一緒に行くつもりだったけど、急に大事なアポが入っちゃったのよ」

高級革小物ブランドのロンシャン?セレブが集まるようなパーティ?あまり気乗りがしなかったので、

「そういう華やかな場所、私には場違いだわ。誰か他に行ける人、いないの?」と言ったのだけれど、

「ただのソワレよ。深く考えないで、美味しいアミューズ・ブッシュ(一口大のオードブルのこと)とお酒を楽しんでくればいいのよ。新しい出会いがあるかもよ」

ヴァレリーには、私が彼と別れて一人暮らしを始めたことを話した。気を使ってくれているのかもしれない。

「OKよ」と答えると、そうこなくちゃ、という顔をして早口で「編集長は、この手のソワレは、知り合いの輪をどんどん一人で渡り歩くから、彼にエスコートは期待しないでね」。

確かに、私を「我が編集部の事務員です」なんて紹介して回るはずがないわよね。

「それからドレスコードは、ブラック・タイ、頼むわよ」と言ってさっさと自分のデスクに戻るや否や、すごい勢いでパソコンのキーボードを叩き始めた。

 

ブラック・タイってどんな服で行けばいいんだろう?ネットで調べて画像も確認してみる。これなら別れた彼が去年のクリスマスにプレゼントしてくれた、黒のデコルテの広く開いた膝丈のワンピースで大丈夫そう。処分しないでおいてよかった。

 

翌日、編集長と一緒にタクシーでソワレに向かう。場所はオペラ・ガルニエ。会場に着くなり、編集長はボーイからシャンパンのグラスを二つ受け取り、一つをさっと私に渡し、「楽しんでね」と一言残して、少し前に到着したらしい美女連れの知人の元へ足早に向かった。やれやれ、ヴァレリーの言う通りだわ。

 

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階段の踊り場や広間でダンサーたちがコンテンポラリーダンスや、クラシックバレエを即興で踊っている。オペラの殿堂ならではの素敵な演出。

上質なシャンペンやワイン、手の込んだアミューズ・ブッシュ(一口大のオードブルのこと)。シェフたちがその場で振る舞う料理。行列ができているところに私も並んでみたら、流行りの日本料理で、牛肉のローストのバニラアイスクリーム添え!この不思議な組み合わせが繊細な味を生み出して、美味しい。

招待客の男性はみんなスーツでほとんどが蝶ネクタイ。女性は裾の長いパーティドレス、スーツ、ワンピース、黒のパンツ姿とより自由なおしゃれを楽しんでいる。

 

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どよめきが起こって人だかりができたので、何かと思ったら、スーパーモデルのケンダル・ジェンナーが来ていた。周りの人の話によると、ロンシャンと契約したみたい。

スマホを向けて写真を撮っている人もたくさんいる。こういうところに集まる人はセレブなんて見慣れているのかと思っていたけど、こんな風にはしゃぐのね。

 

それにしても、70周年記念だというのに、社長のスピーチもなし、会社の歴史を紹介するようなパネルやパンフレットもなし。ソワレってこういうものなのかしら。

 

知り合いは誰もいないし、うまく話し相手も見つけられず、何だか自分は場違いな感じがして落ち着かず、1時間ほどで会場を出る。

新しい出会いどころじゃなかったわ。

こんな華やかな場所に蝶ネクタイをつけてエスコートしてくれる彼を自分は欲しているかしら?世界の違う人と付き合っても続かないわね、きっと。

 

でも、こんな風に一つ上のクラスの人々や、非日常的な華やかな世界が見られたのは楽しかったし、お酒も料理も美味しかった。

 

あの暑かった夏が嘘みたいに、夜になると薄手のコートでは、肌寒い。広場からすぐ地下に降りて、オペラ駅からメトロに乗って帰ることにした。